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言葉のない女の子とお母さんと美容師と。

先週末の話。土曜日といえば、美容室は戦場。そんな日のワンシーン。
[speech_bubble type="fb" subtype="L1" icon="2.jpg" name="アシスタント"] みちさん、ご新規の方、個室にお通ししてます。お願いします。[/speech_bubble]
[speech_bubble type="fb" subtype="R1" icon="ohno.jpg" name="大野"] ありがとー[/speech_bubble]

 

[speech_bubble type="fb" subtype="L1" icon="2.jpg" name="アシスタント"] なんか、ご予約はお母様がされたみたいです。[/speech_bubble]
[speech_bubble type="fb" subtype="R1" icon="ohno.jpg" name="大野"] あ、そーなんだ。[/speech_bubble]

 

レセプションにて2枚の名刺を取り、ご記入頂いた新規カルテに目を通す。そこには、雑に書かれた苗字と生年月日、来店動機のチェック欄に印があるだけ。。瞬間、僕の心はザワつきます。個室のカーテンの向こうに、どんな方が待っていらっしゃるのか。。

 

 

一点を見据えて微動だにしない女の子。と、見守るお母さん。

 

カーテンをくぐると、とても優しそうなお母さんと、女の子が待っていました。これは、、、と思い、まずお母様に名刺を渡し、女の子にも渡す。無言で受け取り、僕の名刺をジッと見つめるだけの女の子。その後も鏡の中の一点をボーッと見据えてる。

 

髪の毛は真っ黒のボブ、肩に当たってハネている。前髪も目が隠れてて、顔がよく見えない。しかもところどころに不揃いに切られた短い毛があったり、切りっぱなしの毛もある。
あとあと、聞く話によると、突然、家の中の工作ばさみで、自分の髪を切り出したので、止めてお母さんが切ったけど、上手くいかなかったとの事。

 

[speech_bubble type="fb" subtype="R1" icon="ohno.jpg" name="大野"] 〇〇ちゃん、こんにちは!(ニコニコ)[/speech_bubble]

 

[speech_bubble type="fb" subtype="L1" icon="2.jpg" name="女の子"] 。。。[/speech_bubble]

 

緊張してる?、、ろうあなのかな?それなら筆談にするか、、それとも別の理由が、、、?僕の中の土曜日時間の針が、少し止まって、色んな事を考える。

美容師を10年やってきて、色んなお客様に出会ってきました。耳の聞こえない方、車椅子の方、病を患っている方、先天性の疾患をお持ちの方。。みんなそれぞれ、キレイになりたいし、可愛くなりたい。なにより、【なりたい私】がありました。

 

[speech_bubble type="fb" subtype="L1" icon="2.jpg" name="お母様"] この画像みたいなヘアスタイル、私は好きなんです。[/speech_bubble]

 

といって、見せて頂いたのがこのスタイル。 


ヘアカタログ全国ランキングで、何年も上位にいるこの作品。少し大人びたスタイルですが、カジュアルな雰囲気に崩せば、若い子も全然似合うヘア。

とはいってもこれはお母様が選んだスタイル。

(彼女はほんとうにこのヘアスタイルでいいのだろうか?)

なんて疑問も生まれてくるわけです。

 

[speech_bubble type="fb" subtype="R1" icon="ohno.jpg" name="大野"] (画像を見せて)こんなヘアスタイルにしたいのかな?(ニコニコ)[/speech_bubble]

 

[speech_bubble type="fb" subtype="L1" icon="2.jpg" name="女の子"] 。。。[/speech_bubble]

 

 

 

。。。気を取り直して。

 

[speech_bubble type="fb" subtype="R1" icon="ohno.jpg" name="大野"] もっと短い方がいいのかな?(ニコニコ)[/speech_bubble]

 

[speech_bubble type="fb" subtype="L1" icon="2.jpg" name="女の子"] 。。。チラリ[/speech_bubble]

 

 

.  .  .  .  _| ̄|○ 

 

心折れかけますが、こんな事ではめげません。折れない心。アイアンハートです。ひとまずシャンプーしてもらって、その間にお母様とコミュニケーションを。すると、お母様もお嬢さんとはコミュニケーションが取れない、と。正直なところは分からないから、私がヘアスタイルを選んだとの事。

という事は、、、?

 

伝えたくても伝えられない。それならハサミで会話しようじゃないかっ(キラキラ)

 

本人が意図するヘアスタイルが必ずある。言葉にならない想いが、伝えられないヘアスタイルと、なりたい私が彼女の心の中にある。かならず!

言葉でのコミュニケーションが取れないなら、美容師がやるべき事は、ただ一つ。

 

僕の言葉をハサミにのせて。見て、感じてもらうのみ。

 

そこからは時間との戦い。切って、聞いてみて、表情の変化だけを頼りに。1スタイル、2スタイル切って、お母さんに聞いてもらおう作戦。

 

バッサリカットの1スタイル目を猛烈スピードで切り終えて、

 

[speech_bubble type="fb" subtype="L1" icon="2.jpg" name="お母様"] 〇〇ちゃん、どう?もっと切る?[/speech_bubble]

 

[speech_bubble type="fb" subtype="L1" icon="2.jpg" name="女の子"] 。。。もっと。。[/speech_bubble]

 

かしこまりました合点承知の助。スババッと2スタイル目を切る、30歳、美容師11年生。この時点で田中美保さんショートよりも短い。

 

[speech_bubble type="fb" subtype="L1" icon="2.jpg" name="お母様"] 〇〇ちゃん、どう?もっと切る?[/speech_bubble]

[speech_bubble type="fb" subtype="L1" icon="2.jpg" name="女の子"] 。。。切る!。。[/speech_bubble]

 

(まじか。けっこう短いのにな。。。いいのかな。。)こうなってくると、サロンワークの状況も穏やかではありません。外界とは隔離された個室の中で奮闘している間にも、来店中の顧客様の回転と、ご予約のお客様の来店は滞りなく進んでおります。

ここで、他のお客様のカットやパーマのワインディングなんて重なっていようものなら、表参道のど真ん中で、穏やかに死を迎えます。ほんとよかった。。

そして切る切る。日本ハムの大谷選手の豪速球にも負けぬスピードで、切ること、計4回。さすがに額に汗にじむ。いつもはサラ〜っと余裕ぶっこいてやってますが。さすがに、ね。

 

なんとしてでも汲み取りたい。君のその想い。

 

結局、その女の子は僕より短いショートカットになりました。後ろから見たら、男の子かと思うくらい、レイヤーも入れて、トップも立つくらい。

[speech_bubble type="fb" subtype="L1" icon="2.jpg" name="お母様"] 〇〇ちゃん、どう??[/speech_bubble]

短すぎないんじゃないかと、少し心配そうなお母さん。

 

[speech_bubble type="fb" subtype="L1" icon="2.jpg" name="女の子"] ニコッ☆[/speech_bubble]

 

なーんて可愛い笑顔なんだろう。その笑顔を見た瞬間、僕の時間が止まった。

そのあとも、ずっと笑顔で、ニコニコしててくれた。笑顔が似合う、とっても可愛い女の子。女子校にいたら、うっかりモテちゃうんじゃないかってくらい。彼女の笑顔ひとつで、個室の空気が澄んでいくのがよくわかる。お母さんもビックリしてる。

結局最後まで、しっかりした会話はできなかったです。それに、最後に切ったヘアスタイルが、正解だったのかは、今でもわかりません。だけど、一つ正解があるだとしたら、それは彼女の笑顔なんだと思います

10年やってきて、上手に切ろう、オシャレに切ろう、速く切ろう。色んな事を考えてきたけど、改めて大切な事に気付かされたよね。セオリーとかベーシックとかトレンドとかではない

笑顔になる為に切ろう。

だだこれだけ。

これは美容師さんにしかできない仕事だよって、その女の子が教えてくれた気がします。

 

そんな先週末

写真も笑いもない、文章だけの長〜いブログ、読んで頂いてありがとうございました。

 

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